実績バリバリの中高一貫校に進学、その後なじめず失敗した例

勉強ができないことは仕方がないことです。

努力してもお金をかけてもどうにもならないこともあります。

今回は、悲劇的だった一つの実例を挙げます。

勉強の才能は、平均的だったが、とても真面目に頑張るある兄妹が、親の希望の元、バリバリの進学実績を誇る、私立中高一貫校へ進学し、塾費に多額のお金をかけ、休日返上で勉強した結果、どうなったかを紹介致します。

母親はとても教育熱心、お金をどんどん教育費に使う

 

この兄妹の父親は銀行マン。母親は専業主婦でした。あまり、夫婦仲も良さそうではありませんでしたが。。。。。
一見、よくあるごく普通の家庭だと感じました。

収入は一般家庭より少し多い程度で、お金持ちというほどではありません。しかし、母親はとても教育熱心で、教育費にお金をどんどん投資するタイプでした。

そして、大手塾に通いながら、私が経営する個人塾で個別指導を依頼してきました。

兄は、進学実績バリバリの私立中高一貫校1年生、妹はその私立小学校5年生の時です。

 

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大学進学実績最優先、医者の子供が多い私立中高一貫校

彼らが通う私立中高一貫校は、進学実績は非常に優秀な学校でしたが、中学受験は、地方の私立学校ということもあり、下部の小学校からの進学は9割以上受験には合格します。また、外部受験でも都会の中学受験とは違い、競争が少ないため、偏差値50程度でも合格する学校です。
高校部の実績は素晴らしく、全国の国立医学部合格ランキング上位に顔を出すほどの学校です。医学部の実績が多いのは、お医者さんの子供が多いため医学部志望が多いためです。

当然、私立校ということもあり、中学からの学習難易度は高く、学習スピードも速い。英数国理社とも、中学1年時から高校知識に近いことまで学習し、そして中学2年で中学内容は全て学習し終えてしまいます。中学3年からは、完全に高校教科書、問題集を導入し、公立高校進学校1年生がすることを、中学3年生に行います。

この兄妹だけではなく、この学校の他の生徒も指導経験の多い私ですが、
この学校のスピードについていける生徒はわずかで、学校内全体の20%程度くらいではないかと感じています。

そのようななか、

私はこの兄妹を請け負いました。

妹は中学受験に向けて、兄は、現在上位40%くらいだから、上位20%に入れるようになんとか頑張らせてほしいとの要望でした。

普段、平日は、毎日のように他の大手塾に通っているため、私が指導したのは、日曜日、兄2時間に、妹2時間の計4時間、日曜日や祝日に指導することになりました。

 

真面目だが数学、英語とも丸覚え中心の学習

最初に兄を見たときの感想ですが。。。。。。

目が死んでいる。。。。。。と一目見て思いました。

なんでこんな目をしているのだろう。。。。(後々わかったことですが、いじめにも合っていたようです)と思いながら、数学、英語を指導して、力を探ってみました。

どうやら、典型的な、数学が理解できないタイプで、やり方の丸覚えで乗り切っていくタイプでした。英語も文法を理解せず丸覚え、学習感覚を掴んでいませんでした。

私は、すぐに感じました。

「これは、相当に上位に行くには苦労する。むしろ、これから成績を下げるだろう」

その他の教科も丸覚えできる教科のテストはそこそこ点数をとっています。
社会や理科の暗記分野などはそつなくこなしています。国語もそこまでひどい点数ではありません。
また、暗記をスムーズにできるということは、それも一つの才能で、それを活かして、テストで高得点を狙うこともできるでしょう。

しかし、まだ、中1です。

いくら難易度の高いテストとはいえ、中学数学の最初から、文章題のやり方をしっかり理解できていないようでは、今後、この学校ではついていけるはずもありません。

学年が進んでいくと、いくら解説して、理解してもらったとしても、スピードが速すぎて、解説が間に合わないのです。
範囲を終わらせることさえできなくなってきます。高校レベルになるともうお手上げでしょう。

そして、難易度が上がってくると、そのような生徒は基本さえ理解ができなくなってきます。スピードが速いとなおさらです。難しすぎて脳が数学拒否反応を起こしてしまう場合もあります。

しかし、彼の場合、まだまだ 諦めるのはまだ早いはず、

決して、彼の頭が悪いとも思わないので、わずかな可能性にかけ、私は必死で解説を続け、問題を解くポイントを伝えました。
そして、何とか彼の能力を引き出そうと全力で取り組みました。

 

テスト結果は悪いわけではない。しかし、、、

1ヶ月がたち、2ヶ月が過ぎ、やがて、テスト結果が出ます。

結果は、彼にしてはまずまずの点数です。

しかも、数学難問は、学校授業でした問題を一語一句変えずに出題してくれたおかげで、暗記が得意な彼はそれを丸暗記し(得意というよりは、それしか方法がなかったのではないかと思うが)高得点を獲得。その影響もあって上位20%のところまであと少しの位置にいました。

そうようなテスト結果が数回続きます。

そうしているうちに彼の心はだんだん疲労していきます。

毎日、毎日がテスト勉強の連続、心から遊べる日がない。土日も塾、家庭教師。。。。テストが終わったら、また次のテスト勉強。。。。

親はテスト結果を気にしてばかり。。。。
自分では、理解ができていなくて、無理やり丸覚えで何とか点数を取っているのはわかっているから充実感も達成感もない。
周りの友達は、遊びながらでも同じ点数をとっている。。。

本人もいつか今のままでは破綻することがわかっていたでしょう。。

私もそのことがわかっていたので、親への説得を試みます。

「お母さん、このテストを見てください。丸覚えで点数をとっていて、本当の部分は理解できていません。」
「いつ成績が下がってもおかしくないでしょう。あまり勉強勉強とお尻を叩かなくても、得意な暗記科目で点数をとって、数学は基本重視でいきませんか?」
「上位20%達成は、今の段階で、無理する必要はないと思います」
「大学受験までに疲れてしまいませんか?」

しかし、彼のお母さんは私にこう返してきました。

「いや、中学3年次にあるクラス分けで、どうしても上のクラスに入れたいんです。今のいじめられている嫌いな子とクラスを離れようと思ったら、上のクラスに行くしかないんです。」
あと少し頑張れば、そのクラスに入れそうって担任の先生にも言われました。先生、家庭教師の時間増やせませんか?日曜にもっと時間を伸ばしましょう。御願いします。助けてください。」
「上のクラスに入れれば、彼もやる気がもっと出て、変われると思うのです」

あと少し頑張る?
彼はもう限界なのがわからないらしい。。。。

私も迷いながら、時間を増やしてもらえれば、収入が増えるわけで、ビジネスライクに考えると、この申し出は断りにくい。ここで私が断ったとしても、彼の母は、他の家庭教師を雇ってもっと彼に勉強をさせることをやめないだろう。

こうして、さらに私は、彼との勉強時間を増やすことにした。彼が2時間私と家庭教師の授業をした後、彼は2時間の間、食事や自習をする。
その間に私は妹に家庭教師の授業をし、終わった後、1時間彼にまた授業をするという方法だ。

つまり、彼は日曜に、約5時間、ぶっ続けで勉強だ。(時期の迫った受験生がこれならまだ話がわからないでもないが)
しかも彼は、他の曜日にも塾に通っている。日曜に特別講義を受けた後に私の授業という日もあった。

私も、何とか彼を救う良い方法はないかと探った。数学の難問や、英語文法を理解できない、感覚が掴めない、
いわゆるセンスがない子が、高レベルのテストで点数をとり続けることは本当に難しいことを知っていながら。。。。。

私は家庭教師を続けるという選択をしました。

それが正しかったのか、それとも間違いだったのか、今でも私はわからない。

 

そして、とうとう限界に達した彼。。。。

その後彼はどうなっていったか。

中2も半ばになると、数学も丸暗記では対応できなくなり、彼の点数はどんどんと落ち始めました。英語も難易度が格段に上がり、成績は下降線を辿ります。各教科、同じように下降線です。

やはり、もう彼は限界を迎えていました。

彼の自宅で、妹の家庭教師をしていると、どこからか家族ケンカの声が聞こえてきました。

「出てきなさい!勉強しなさい!何でできないの!」(母泣き声)
「大丈夫だ!お前はやればできる子じゃないか!」(父優しく語りかける)
「いやだ!僕ここにいる!もうやだ!」(彼の泣き声)

どうやら、彼がトイレにこもって出てこなっかったらしい。。。。。

私が来ているのがわかっていてこの様。。。。。

やはり、私は彼を追い詰める手助けをしているただの悪人なのか?(自問自答)

中3になり、彼は上位クラスには入れませんでした。
そして、追い込まれた彼は、家族と相談の結果、中3の早い時期に、学校を退学。
公立中学に転校し、高校受験を目指すことになりました。

その後、まもなくして私の手から離れ、それまでとはまったく別の塾に行き、環境を変えることになりました。
(妹の家庭教師はその後しばらく続けますが、しばらくしてやはりやめたため、その後の彼の詳細はわかりません。)

この先、彼がどの大学に進むのか、どこに就職して、どのような大人になっていくかはわかりませんが。
退学は一つの選択肢として、間違いではなかったと信じたいです。

ただ、おそらく彼が心に負った傷は小さくないでしょう。

無理に勉強させることのリスク

理由はどうあれ、彼を追い詰めることに加担してしまった私は今でもどうするべきだったかを悩みます。

普通の公立中学校では、そこそこの成績をおさめたであろう彼が退学までに追い込まれたのは、やはり周りにいる大人たちの責任です。どこかで彼の逃げ道を用意してあげなくてはいけなかったのです。

適度な勉強量、プレッシャーは人それぞれ違うのかもしれません。しかし、達成感、そして息抜きする時間はすべての子供たちに必要です。

学校の成績は確かに大切です。

しかし、それにこだわりすぎては、大切なものを見失い、取り返しのつかないことになる可能性があることを忘れないようにしましょう。

 

 

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