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学力が遺伝で決まるなら親の学力と子の学力は一致する?
当サイトでは今まで多くの学力と遺伝に関する記事を書いてきました。当サイトの一番人気のブログ記事は以下の記事です。
つまり学力は、ほぼ遺伝で決まり、今現在のお子さんの成績は、その遺伝の力、すなわち持って生まれた能力が顕在化したものであり、容易に成績を上昇させたり、偏差値を劇的に上げたりすることは難しい、というのが当ブログの見解です。また長年の私の経験は、このことを裏付けしており、子供たちの遺伝的特徴を各親が受け止め、その子に合わせた教育や環境を整備していくことが理想だと考えています。
当ブログ読者の方からコメントを頂きました。今日はそのコメントにお答えしたいと思います。
以下がそのコメントです。
娘の成績に悩み、こちらにたどり着きました。どの記事もわたし自身の気持ちを軽くしてくれています。(中略)
手前味噌ですがわたし自身は幼少時から数字が好き、読書が好きで、理解力・集中力に長けていたと思います(社会に出て気付いたことですが)。しかし親に必要以上の勉強を強制された記憶はありません。
そのため自分の子供も同じように自然の中での遊びを優先させ自由に過ごさせてきました。然るべき時が来たら、わたし自身と同程度の学習能力は出るだろうと思っていたのです。
しかし娘も中学に入り、「どうやら自分とは違う、これは努力した分の結果は出ないタイプかもしれない」と思い始めました。違う人間なので当たり前なのですが…。しかしなかなか勉強が出来ない理由が理解できずにわたしが混乱しています。
こういったパターンもご経験はありますか?当ブログコメント欄より
兄弟姉妹を見ていればわかる遺伝能力の違い
同じ親から生まれた、同じ環境、同じ学校で育った兄弟姉妹、双子たちにも遺伝能力の差を感じることが良くあります。もちろん、さすが兄弟だなあと思うほど似ている場合も多いです。
つまり、親が同じでも、同じように育てても、勉強能力(当然性格も)違う子に育つことはよくあることのように感じます。
私が見てきた三つの例をご紹介しましょう。
常に学校トップの天才の姉と学校の優秀クラスにも入れずやる気のない弟
両親ともに難関大学理系出身の両親を持つこの姉弟は、3歳違いでした。
同じ、私立中高一貫校に進学し、二人とも医学部を志していました。しかし、二人の性格は全く違い、姉は天才の上に超のつくまじめで県内一の進学校でトップ、弟は、中学時代、成績が学校の真ん中くらい(中高一貫校の真ん中くらいなので、全体では上位20%ギリギリくらい)、とてもではないが、国立医学部は無理な成績でした。実際に教えていてもそこまで頭が良いかは微妙なラインでした。
その後、姉は順調に第一志望の難関大学に現役合格しました。
弟は? どうなったかというと、
高校時代の後半からスイッチが入り、姉の成績には及びませんでしたが、見事国立大医学部に合格するほどの成績にはなりました。
こういった後伸びするタイプも時々出会います。
中学時代にやる気がなく、成績は悪くても、遺伝能力がある子は、高校時代いつのまにか勉強するようになっているということはよくあります。浪人してスイッチが入る子もいました。
ただ、公立中学で、平均点以下しか取れない子供たちで、そういった進学重視の高校普通科に進学し、偏差値を劇的に上げる子は本当にまれです。いなくはないのですが、期待しない方が賢明です。
恐ろしく学力の違う双子
恐ろしくという言葉は適切ではないかもしれませんが、片方は偏差値70に近い天才で、もう一方は偏差値40に満たない二卵性の双子を指導したことがあります。
これこそ遺伝子が違うことでしか説明ができないケースです。親の遺伝子だけが、子の遺伝子を決定するわけではないということです。
偏差値が40に満たなかった子は、教えても教えても理解できず、暗記もなかなかうまくいかず苦しみました。本人は頑張ったつもりでも点数はほとんど上がりませんでした。
ついには不登校になってしまったのですが。。。塾に通ってもどうしてあげることもできず。。。
おそらく、彼は学習障害という範疇に入るケースであったと思います。しかし、学習障害は専門家でも判定が非常に難しいようで、彼は学習障害とは診断されませんでした。診断されたところで何か治療法があるわけでもありませんが。
こういった、学習障害が疑われるケースは非常に多く、グレーゾーンの人も多くいます。そして、その多くが何も対策されず見過ごされています。優秀な子供たちと一緒に授業を受けなければいけない中学時代の地獄をなんとかやり過ごし、進学できる高校に進むしかありません(普通科には進学しない方が良いのは言うまでもありません)。メンタルだけは壊れないよう親が気を付けましょう。
誰にも予想できなかった偏差値上昇を成し遂げた子
彼は小学校の時から私の塾に通っていました。
ただ、親の期待とは裏腹に、成績はパッとせず、本人の向上心は人並み以上に中学時代からありましたが、一生懸命に勉強を続けても中学時代は一般的な公立中学で上位20~30%程度の成績でした。英語が苦手で、実力テストでは60点程度、国語も数学も似たようなものだが、苦手意識はなかったようです。
その向上心から一生懸命、継続的に塾では授業を受けてはいました。しかし、地頭の良さを感じず、親は国立大学に進学させたいようでしたが、この地頭では、このまま高校生になり、偏差値50以上、5教科必要な国立大学受験はどこも厳しいなあと思いながら指導していました。(偏差値にすれば、おそらく50かその下辺り)
そんな彼は、中堅の普通科進学校に進学します。高校時代、真面目さは相変わらず、地頭も良いとは思えない程度で変わりません。ときどき、とんでもない計算ミス(九九のミス)や、とんでもない基本が理解できていないことに気付かされ、驚いたほどです。
しかし、そんな彼は、高校3年生の夏ごろからとんでもない偏差値をとり始めます。
英語で、60超え、数学で50後半、国語でも同程度の結果を出し始めたのです。
最初の頃、私は半信半疑でした。マークだし、運がよかったのかな?と思うほどです。しかし、記述でも同程度の偏差値をとってきます。
そして、秋には準難関国立大学のC判定以上をとり始めたのです。
長年指導してきた私を始め、担当を任せた学生講師、教えている本人たちが、そこまでの手ごたえを感じていないにもかかわらずです。
これは、非常に不思議なケースでした。彼は結局、準難関国立大学理系に合格を果たします。
おそらく、彼が秀でていた能力は、「ゆっくりでもコツコツ努力する」「わからないことは納得するまで考える 誰かに聞いてでも」この二つだと思います。これも、遺伝的能力の影響を感じます。この偏差値レベルでは、誰にでもできることではありません。頭の切れや良さは最後まで感じませんでした。
彼の親も、そして、塾に通っていた2歳違いの兄も、彼と同じようなタイプには感じませんでしたので(兄は中学時代弟より成績優秀だったため進学した高校も兄の方が上、しかし、弟と違い偏差値はそこまで伸びなかった。最終的には弟が上)、遺伝はある程度、「運」のような部分もあるのではないでしょうか。
勉強ができない理由は遺伝だが、その後は誰にもわからない?
科学的に知られている事実として、遺伝子は相当に複雑で、環境や条件により後になって発現する遺伝子(能力の発揮)があるようです。
つまり、現在の子供たちの成績は、遺伝的能力でだいたいが説明付き、大きく外れない今後の予想ができますが、環境条件が揃えば、それが外れることもあるのも事実です。将来、そのような遺伝子解析ができる日が来るかもしれません。遠い将来だとは思いますが。
おそらく、今は子供の現状を親が細かく客観的に分析し、その遺伝能力に基づいて最善の策を打っていく。勉強がすごく苦手な子は、苦手な子なりに勉強すれば良い、成績は二の次で問題ないと私は思います。勉強ができないなら、できるようにすることに時間やお金を投資するのではなく、もっとその子に合った戦略を練り直すべきではないでしょうか。
今後、そのような戦略の具体例を多く記事を書いていきたいと思います。
参考(有料記事)
勉強ができない子供でも大丈夫!有名大学へ進学させたい親の「5大戦略」