子育てや、本人の努力では説明できない「成績」

私は、約20年間、塾や家庭教師で生徒たちに接して来ましたが、当初から、子供たちの「頭の良さ」の格差に疑問を持って来ました。頭が良い子は、親の子育てが成功し、真面目で、小さい頃から一生懸命勉強してきたから成績が良い。そして、頭が悪い子はその逆で、親の子育てが十分でなく、勉強をさせてこなかったから、本人の努力が足らなかったから成績が悪い。というようなことでは、全く説明がつかないようなことが、目の前で繰り返されていました。

また、子供たちに感情移入し、絶対にこの子を志望校に合格させてやろう、悪い点数を劇的に良くしてやろう、と親心にも似た感情で、数年間必死に教えたにもかかわらず、思うように勉強ができるようにならない、思ったほど伸びない、または、まったく伸びない子がたくさんいます。

むしろ、成績が伸びる子は、いつの間にか?伸びちゃったという感じで、そこまで感情移入や、こちらの労力がたいしてなくても、伸びる時は、本当にいつの間にかできるようになっています。まるで、塾の影響などたいしたものではなかったかのように。。。

私は、毎日のように苦闘しました。

誰もが成績を、塾で上げることは不可能ではないのか?

いや、工夫が足りないからだ。もっと工夫して、努力すれば、子供たちに伝わる!?

でも、生徒たちは理解したことを、すぐに忘れて元の状態に戻ってしまう。。。

どうすればいいのか?、、、、、もうあきらめるしかないのか。。。。

このストレスはいつもありました。

 

そんな中、うすうすは感じていたのですが、そして、世の中もうすうすはわかっている事だとは思うのですが、

「人の知能は、大部分が遺伝で決まる」

という事実が、科学的に証明されていることを知ります。

この「遺伝」を理由に考えると、塾での子供たちの反応や結果が、ほぼ説明できてしまうのです。

 

これを、初めて知る方は、ショックかもしれません。差別だ!優生思想だ!努力を否定するのか!と怒る人もいるかもしれません。

しかし、この事実を受け止めるこそこと、子供たちのためになり、そして、社会の課題を解決して行くために必要なことであると、私は確信しています。

この科学を理解しようとしない人たちのために、罪もない子供たち、そして親たちが苦しめられているのが現実です。

 

私が出会った、知能や学業成績の遺伝率詳細は以下の通りです。(行動遺伝学の第一人者である安藤寿康氏著書 日本人の9割が知らない遺伝の真実より)

だいたい、学業成績は、50%から70%以上、教科によっては最大90%近く、遺伝の影響があるようです。

さまざまな分野の遺伝割合グラフ

 

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どのように科学的に証明されているのか?

ここでは、難しい言葉を抜きにして、どのように「知能は遺伝」することを科学が証明したかを紹介致します。

まず、たくさんの双子に協力してもらいます。(日本でも行われていますが、世界中の双子たちが対象です。)

ご存知のように双子には、一卵性と二卵性があります。

一卵性の双子は、遺伝子的に同一であることが、科学的にわかっています。同じ受精卵から生まれているわけですから当然です。

そして、二卵性は、同じ親からできた受精卵ですが、遺伝子配列が50%違う部分があります。

また、双子の中には、同じ家庭で育つ人もいれば、里子として一人が養子に出され、全く違う環境で育つ場合もあります(双子の場合、昔はよく片方が里子に出されるケースが日本も含め世界中で多かったようです)

この一卵性、二卵性両方の双子の行動分析を通じて、学力や性格、身体的特徴、病気などに遺伝的な影響がどの程度あるかということを統計学的に算出するわけです。これを、行動遺伝学と言います。

この遺伝的な影響は、%で表示されます。例えば、数学的能力の遺伝的な影響は、80%以上と結果が出ているようですが、これはどういうことでしょうか?

双子を例にとると、

例えば、一卵性のある双子が、別々の家庭、全く違う地域で育ったとしましょう。イメージしやすく国内で、東京と、沖縄で育ったします。一人は、親の教育に熱心な方針から、英才教育を受け、中学受験を経験し、私立の有名進学校に入学し、大学を目指します。もう一人は、自然の中で自由に育てるという親の方針から一般の公立幼稚園、小学校、中学と進み、本人の希望で普通科のある公立高校に進学、大学への興味を持ちます。
全く違う環境で育った二人ですが、「数学的能力の遺伝率が80%以上」ということは、二人の高校3年時、受験前の数学成績を比べると、ほぼ同じか、違ってもわずかである可能性が非常に高いということになります。

もちろん、これは統計学ですのでばらつきがあり、全ての人がそうなるとういわけではありません。ただ、違う環境で育っても、日本で、しかも標準レベルの教育を普通に受けているのであれば、親の教育方針に関わらず、数学の成績はそんなに変らないということを、行動遺伝学の検証結果は、数字で示していることになります。

もう少しだけ詳しく説明すると、

数学で成績が良く、得意な生徒がいたとしても、本人の意思や親の努力に関わらず、数学が得意で成績が良い「理由」は、遺伝的な要因が80%以上ということになります。残りの20%は、さまざまな環境的な要因で理由が説明されるということです。塾に通ったからとか、学校が良かったからとか、幼児体験、親の教育方法が良かったからとか、もちろんそれも理由の一つにあるかもしれませんが、影響はわずかで、そう単純に説明できることではないようです。

数学の成績が悪い場合も同じです。その理由の80%以上は、本人の意思や子育てではどうしようもない「遺伝的な理由」ということになります。親の教育が悪かった、本人の努力が足りないから成績が悪いとはまず言えないのです。

遺伝は関係ない、努力でなんとかなるという人の根拠

ネットで調べると、知能を図る指標として有名なIQの遺伝率は、50%で低く、残り50%は環境の影響を受けるから、知能は生まれ持ったものでなく、後天的な頑張りでどうにかなるものだ!
遺伝を気にしすぎることはない、「学校の勉強は、親や本人の努力で良くすることは全然可能だ」という意見をよく聞きます。

私が参考にしている安藤氏の著書でも、上記図にあるように、IQの遺伝率(全体)では約50%で、残りは環境要因で説明されるとなっています(共有環境、非共有環境の違いについては、議論が複雑になるため、ここでは環境要因として一つにまとめさせてもらいます。)

しかし、この「環境」というものが、具体的に何に当たるものなのかが、たいへん複雑で、かつ要因が無数にあるため、科学的に、具体的に効果を検証することはまだまだできていないようなのです。

 

遺伝的に成績が決まってしまうことに賛成できない人たちは、この、最大50%程ある「環境要因」を根拠にして反論してくるのです。

努力したら成績、学力、知能は上がる。遺伝は気にしなくてよい  と

 

本当にそうでしょうか?

努力することは大切だと思いますし、誰しもが必要です。
しかし、遺伝的な差は、残念ながらその努力で埋めることはできません。

 

 

上記で紹介した著書に次のような記述があります。

 

教育が一部の人にしか与えられていないときは、能力や知識の個人差は、その教育を受けたか受けなかったかという環境の差で説明される割合が大きいでしょう。しかし、教育があまねく行き届いたとしたら、そのときに顕在化するのが遺伝的な差なのです。

日本人の9割が知らない遺伝の真実より

 

 

今の日本で、小~高等教育を受けることができない地域はありません。同じレベルの教科書、問題集が、低価格でどこでも手に入ります。無料で人気の映像授業も、スマホさえ持っていれば誰でも見ることができます。

 

スポーツに例えて考えてみるとわかりやすい

つまり、こういうことです。

野球を全くしたことない人と、野球部で長年練習し、かなりセンスはないけれど努力してきた人、どちらが上手かは、よっぽど運動神経が優れた人を相手にしない限り、後者のセンスのない野球部員が上手なはずです。

それは、野球を全くしたことがない人が相手だからです。

しかし、野球経験がある人同士で比べた場合はどうでしょうか? 練習量はもちろん影響を与えるでしょうが、短期間で上手になる人もいるわけで、結局、もともとのセンスが、やればやるほどその差になって現れます。努力で埋められない差になることも当たり前のようにあるはずです。

自分がやったことがあるスポーツで想像してみてください。あいつには敵わないと思う人がいっぱいいませんか?

勉強もそれと同じです。

ただ、スポーツと違うのは、全ての周りの人が、かなりの時間数同じような指導を受け、勉強しているということです。何年も、ほぼ毎日です。塾に行っているとか、いないとか、家庭学習をしているとかいないとか、あまり大きな差ではなく、通常の生活を送っている人は全て、いつでも勉強ができる環境、教育してもらえる環境にあるのです。勉強してはいけない、なんていう親はいないですよね。

つまり、勉強に関しては、大きな環境差は、今の時代、あまりないのです。

大学受験を野球に置き換えると、10年以上野球の練習を毎日のようにしてきた者同士が、限られた椅子であるレギュラー争いをしているようなものなのです。有名大学、つまり強豪チームになればなるほどその厳しさは増します。持って生まれた能力が、野球に向いていないような、運動がもともと苦手な子など、太刀打ちできるわけがありません。

しかし、残念ながら勉強の世界では、それを努力不足で片付けられてしまうのです

結局、成績は本人と親の努力以外のところで決まる

遺伝で成績が決まるからといって、親が一生懸命に子供の学力を上げようとすることを否定したり、本人が志望校を目指して勉強に頑張ることを否定するわけでは全くありません。また、努力したり、苦労するなど、ある条件が揃わないと開花しない才能もたくさんあります。どのような才能を持っているかは誰にもわからないのですから、現状を受け止め、一歩一歩前に進むことは必要だと思います。

しかし、野球チームのレギュラー争いに負けたからといって、人格否定されることがないように、大学受験に失敗したからといって、人生に烙印を押されたわけではありません。学校や塾、親のせいでもないのです。

また、野球に向いていなければ無理に野球を続ける必要がないのと同じで、大学受験や、高校受験を楽な方に選択しても、人生に失敗したわけではなく、自己嫌悪を感じる必要もなく、必要以上に責められるべきではないのです。

 

 

最後に、上記安藤氏の著書の中での発言をご紹介します。

 

 

 IQは70%以上、学力は50〜60%くらいの遺伝率があります。生まれた時点で配られた、子ども自身にはどうすることもできない手札によって、それだけの差がついているわけです。残りは環境ということになるわけですが、学力の場合、さらに20〜30%程度、共有環境の影響が見られます。(中略)

つまり、学力の70〜90%は、子ども自身にはどうしようもないところで決定されてしまっているのです。
 にもかかわらず、学校は子ども自身に向かって「頑張りなさい」というメッセージを発信し、個人の力で何とかして学力を上げることが強いられているのです。

これは、科学的に見て、極めて不条理な状況と言えるのではないでしょうか?

日本人の9割が知らない遺伝の真実より

 

 

 

 

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