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進学塾講師が思う英語早期教育のメリット・デメリット

目次

英語の早期教育に反対する人とその理由

日本では昔から早期の英語教育に反対する人は多い。もちろん、賛成の人が優勢なので、小学校でも英語教育が必修化されているのだろうと思いますが、それでも日本語教育に力を入れるべきだと主張する識者の方は多いようです。

論争の一番のポイントは、英語の早期教育が「論理的思考能力」の発達の妨げになるかどうかです。英語の早期教育に反対する人の多くは、この部分が大きくひっかかるようです。

つまり、英語を早期にたくさん勉強をしすぎてしまうと、日本語能力、特に日本語で論理的に思考する能力の成長が遅れ、物事を深く考えたり(哲学、国語力)、数学力が十分に発達しないのではないか。という論点です。

果たして実際はどうなのでしょうか?

私が調べた中では、決定的な科学的証拠はまだ示されていないようですので、真偽のほどは図りかねるのですが、実際の塾現場での経験から、この英語早期教育が与える影響を考えてみます。

一昔前より圧倒的に多い英会話教室に通う子供

私の塾の生徒でも、多くの子供たちが英語教室、英会話教室に通っています。小学生のうちに英検5級、4級あたりを取得する子も多く、3級以上を取得する子も珍しくありません。

しかし、英会話教室に通っているほとんどの子供たちは、英語の日常会話すらできるレベルにないことは明白です。たとえ、英検3級以上を取得している生徒でも、「相手の言っていることはある程度わかる」程度で、「自分の意見を英語にして言える」レベルには到底ありません。

それは、0歳から始めようが小学生になってから始めようが同じです。

そうなる要因は、英語という語学を脳に浸透させる。つまり、一般的に言うバイリンガルのように育てるには、相当な量の英語を聞くことが必要となるからです。おそらく、毎日のように何時間も聞く必要があります。

つまり、今日本で行われている英語教育のほとんどは、バイリンガルを育てるには圧倒的に量が少ないのです。おそらく、週数回、英語教室に通うくらいの英語の勉強は、その後の単語暗記の勉強を少し楽にする程度、そして、発音やリスニングが少し良くなる程度の効果しかないのではないでしょうか。

おそらく、この程度の英語の勉強であれば、上記にある「論理的思考能力」の成長への影響など考える必要はないのでしょうし、たくさんの塾の生徒を見ている私もそれを感じたことはありません。

 

帰国子女やインターナショナルスクールの実際

英語に触れる時間が圧倒的に多い状況と言えば、やはり、家庭が英語で子供を0歳から育てている場合や、帰国子女、そして、最近多い、インターナショナルスクールです。

そのような生徒の国語力や数学力はどうでしょうか?

私の塾でもチラホラそのような生徒を見ます。多数ではありませんので、すべてがそうであるとは言えないと断っておきますが、やはり、通常の子供たちが持っている雰囲気とは違うと言わざるをえません。つまり、論理的に深く物事を考えることに対して影響が全くないとは言えないと思います。

それは、文化的なもの、遺伝的なもの、性格的なもの、と要因はさまざまであるとは思いますが、思うように日本の教育制度、受験制度に対応できていないように感じることは事実です。

これは、私の推測でしかありませんが、やはり、圧倒的に英語に触れる時間が多いということは、その分、日本語に触れる時間が少なくなるわけで、幼児期~小学生にかけての、言語能力を形成する大切な時期に、一つの言語で一つのことを深く考える時間が、どうしても足りていないのかもしれません。

バイリンガルを育てた親の意見としてよく聞くのは、環境が多数言語に常に触れる環境だからと言って、放っておいてバイリンガルが育つわけではなく、かなりの親のフォローが必要だと言うことです。放っておくとどちらかの言語に偏ってしか物事を考えることができなかったり、または、文化的にも迷いが生じる。アイデンティティ的な問題にもつながる場合があるようです。

あくまでも個人意見としてですが、物事を深く、そして抽象的に理解していくためには、一つの言語に頼って深め、そして、それを多言語でも理解していくという順番をとっていくことが良いのかもしれません。

 

大学受験時の英語能力は変わらない

早期の英語教育によって、英語に自信を付け、中学以降もそれを得意教科として、英語を武器に受験を戦っていく生徒は多くいます。やはり、お金と手間をかけた分、成果があると思います。自信は何物にも代えがたい武器です。

しかし、小学校時代に全く英語に触れていない、または、中学以降も学校や進学塾の英語だけで戦っていく人が見劣りするか?と言われても、見劣りはしないというのが現場の意見です。中学からの勉強でも、普通にやっていれば、大学受験時には必要な力が付きます。また、会話力も、必要を感じたときからの訓練で十分に追いつくことは可能です。

その証拠に英会話教室への通塾率は大きく上がっているはずですが、現場で英語を教えていて、私たちの時代より高校生が英語をできるようになったとは感じません。

私が教えている生徒には、小学時代に全く英語に触れず(学校のみ)、しかも中学以降も英語教室に全く通わず英語を得意にし、それを武器として上智大学、慶応大学、早稲田大学へ受かって行った生徒もいます。その逆、つまり早期英語教育をしたにも関らず、英語の偏差値が50すら超えない生徒もいます。

数学もそうですが、前倒し教育は、「隣の芝生は青い」だけで、しないからとあまり慌てる必要はないと思います。

英語早期教育のメリット、デメリットまとめ

塾の講師として、英語早期教育についてメリットデメリットをまとめると次のようになります。

メリット

  • 発音が美しくなり、外国人に言葉が通じやすい。リスニングにも好影響。
  • 中学時に勉強時間を他教科に使える。
  • 英語に自信が持て、中学以降の英語勉強に前向きに取り組める
  • 留学やグローバルに働きたいとの意識が芽生えやすい
  • バイリンガルに育てることに成功すると活躍の場は大きく広がる

 

デメリット

  • 費用、時間の両面で多大なコストがかかる
  • 対費用効果はそれほど良くない
  • 他教科を苦手にするリスクを伴う(圧倒的時間を英語教育に費やす場合)
  • 結局は中学、高校以降の本人の努力次第で英語の成績は決まる

 

 

 

 

 

 

 

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